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今回はロボアドバイザー(投資一任型)業界の全体図がわかるように、2020年版の業界マップ(カオスマップ)を作成しました!銀行、ネット銀行、証券、その他の4つに分類し、今後の動向もわかりやすく理解できる内容になっています。
ロボアドバイザーの全体像を知ったうえでこの記事をご覧いただくほうがより理解が深まると思いますので、以下の記事もどうぞ!※すでにロボアドバイザー詳しいなどの方は飛ばしてください。
インターネット上ではFinTechサービス全体のカオスマップは存在していましたが、ロボアドバイザー(投資一任型)に特化した業界マップは調べた限りなかったので、日本初※をタイトルにつけています。(2020年9月1日時点)
このロボアドバイザー(投資一任型)業界マップ(カオスマップ)が、さらにオンラインの資産運用業界を盛り上げてくれるツールになると幸いです!画像ダウンロードで説明資料などにぜひご活用ください!質問などがあればお気軽にDMまで!
当記事を読む前に理解しておきたい投資一任契約とは?
投資一任契約とは金融商品取引法 第2条8項12号に規定されている契約で、簡単にいうと、資産運用を任せる契約です。
十二 次に掲げる契約を締結し、当該契約に基づき、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金銭その他の財産の運用(その指図を含む。以下同じ。)を行うこと。
イ 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十三項に規定する登録投資法人と締結する同法第百八十八条第一項第四号に規定する資産の運用に係る委託契約
ロ イに掲げるもののほか、当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約(以下「投資一任契約」という。)
投資家がロボアドバイザー(投資一任型)を利用する場合は、ロボアドバイザー(投資一任型)のサービスを提供している企業と投資一任契約を締結しますが、国内にロボアドバイザー(投資一任型)のサービスを独自で提供している企業はそれほど多くありません。
例えばWealthNavi for イオン銀行の注意事項には以下の記載があります。
当行は、ウェルスナビ株式会社の取引口座(ETFの自動運用口座)開設申込みの紹介、勧誘及び取次ぎ、お客さまとウェルスナビ株式会社との間で締結する投資一任契約の媒介を行い、資産の管理・運用はウェルスナビ株式会社が行います。
実際に投資一任契約を締結しているのは、イオン銀行ではなく、ウェルスナビ株式会社となっています。そのため銀行や証券会社は、ロボアドバイザー(投資一任型)のサービスを提供している企業と業務提携を行うことで、for ◯◯や+◯◯という形でロボアドバイザー(投資一任型)というサービスを媒介(仲介)しているだけとなります。
今回のロボアドバイザー(投資一任型)業界マップは、銀行や証券会社がどのロボアドバイザー(投資一任型)と業務提携しているのか、未参入の企業はどこなのかがひと目でわかるものです。
ロボアドバイザー(投資一任型)業界マップ
独自のロボアドバイザー(投資一任型)
- WealthNavi(ウェルスナビ株式会社)
- THEO(株式会社お金のデザイン)
- ダイワファンドラップオンライン(大和証券株式会社)
- ON COMPASS(マネックス・アセットマネジメント株式会社)
- 楽ラップ(楽天証券株式会社)
- FOLIO(株式会社FOLIO)
上記6社が独自のロボアドバイザー(投資一任型)を運営している企業です。
WealthNavi、THEO、FOLIOは2013〜2015年に設立されたスタートアップです。WealthNavi、THEOは銀行や証券会社と様々な提携を進めており、成長を遂げています。FOLIOは2018年1月にLINE株式会社と資本業務提携を行い、FOLIOのサービスのほかに、LINE上でロボアドバイザー「LINEスマート投資」を提供しています。※1
楽ラップ、ダイワファンドラップオンライン、ON COMPASSは自社グループの資産運用サービスの1つとして提供しています。
この6社がせめぎあい、国内ロボアドバイザー市場を発展させています。
ロボアドバイザー(投資一任型)× 銀行
- WealthNavi:三菱UFJ銀行、横浜銀行、東京スター銀行
- THEO:新生銀行、SBJ銀行、筑波銀行、武蔵野銀行、山梨中央銀行、北陸銀行、富山第一銀行、大垣共立銀行、十六銀行、南都銀行、広島銀行、伊予銀行、山口フィナンシャルグループ、ふくおかフィナンシャルグループ(十八銀行以外)、沖縄銀行
- ダイワファンドラップオンライン:愛媛銀行
- ON COMPASS:静岡銀行
- 未参入:みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、りそなホールディングス、あおぞら銀行、ゆうちょ銀行、その他多数
WealthNaviは2020年秋からメガバンクの三菱UFJ銀行に導入されるというニュースが出ています。※2
また横浜銀行はコンコルディア・フィナンシャルグループの傘下であり、東日本銀行と合わせると国内最大規模の地銀です。
THEOを運営する株式会社お金のデザインは、ふくおかフィナンシャルグループの傘下である株式会社ふくおかテクノロジーパートナーズから出資を受けている他※3、同傘下のiBankマーケティング株式会社が開発・運営しているウォレットアプリ「Wallet+」を導入している地銀に多く活用されていることもあり、地銀のロボアドバイザー(投資一任型)導入数はTHEOが最大です。新生銀行や山口フィナンシャルグループとは資本業務提携を行うなどして導入を進めています。※4、5
愛媛銀行は2018年8月にTHEOを導入していましたが、2020年4月にサービスを終了。2020年6月からダイワファンドラップオンラインを導入しました。愛媛銀行の株主に大和証券がいるため、その影響があったと考えられます。※6
静岡銀行はマネックス・アセットマネジメント社のON COMPASSを導入していますが、静岡銀行はマネックスフループの株主であるため、その影響と考えられます。※7
ロボアドバイザー(投資一任型)未導入の企業は、メガバンクを持つみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ。そのほかにりそなホールディングス、あおぞら銀行、ゆうちょ銀行、地銀、信用金庫など多く存在しています。
三菱UFJ銀行にWealthNaviが導入されたことを受けて、みずほと三井住友がどう動いているかは注目ですが、もし両企業にもWealthNaviが導入されるとなると、WealthNavi1強のロボアドバイザー(投資一任型)市場となりそうです。
りそなホールディングスはりそなキャピタルがWealthNaviに出資、りそな銀行がTHEOを運営する株式会社お金のデザインに融資をしている影響なのか、どちらも導入されておらず、独自のロボアドバイザー(投資一任型)を開発中なのか注目といえるでしょう。※8、9
あおぞら銀行はGMOインターネットグループとGMOあおぞら銀行を経営しているため、足並みを揃えて独自もしくは提携でロボアドバイザー(投資一任型)導入を進めていそうです。GMOクリック証券はTHEOを運営する株式会社お金のデザインと業務提携を2016年に発表していますが、その後のリリースが特にありません。※10
ゆうちょ銀行は親会社の日本郵政株式会社が大和証券とファンドラップの共同開発を発表しており、ダイワファンドラップオンライン導入になるのではないかと予想されます。※11
その他にも数多くの地銀もあることから、ロボアドバイザー(投資一任型)の銀行導入はさらに進みそうです。
ロボアドバイザー(投資一任型)× ネット銀行
・WealthNavi:住信SBIネット銀行、ソニー銀行、イオン銀行、auじぶん銀行
・未参入:セブン銀行、ローソン銀行、GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行(現ジャパンネット銀行)
WealthNaviの株主にはSBIホールディングス株式会社がいることもあり、ネット銀行最大手の住信SBIネット銀行に導入されています。
その他ネット銀行は楽天銀行や大和ネクスト銀行などもありますが、各グループ内で導入されることが想定されます。
セブン銀行はおつり投資のトラノコに出資していますが、ロボアドバイザー(投資一任型)の導入はしていません。
ローソン銀行は親会社の株式会社ローソンとKDDI株式会社との業務提携が発表されたほか、三菱UFJ銀行が株主であったり、auじぶん銀行にWealthNaviが導入されていたりするため、WealthNaviが導入されるのではと予想されます。
PayPay銀行(現ジャパンネット銀行)はZホールディングス株式会社傘下ではありますが、ZホールディングスはLINE株式会社と経営統合されるため、LINE Financial株式会社を親会社にもつFOLIOがロボアドバイザー(投資一任型)として導入されるのではないかと予想されます。※12
地銀では多く導入されていたTHEOですが、ネット銀行のどこにも導入されない可能性がありそうです。
ロボアドバイザー(投資一任型)× 証券
・WealthNavi:SBI証券、SBIネオモバイル証券、岡三証券
・THEO:東海東京証券
・ON COMPASS:あかつき証券、岡地証券
・未参入:野村證券、松井証券、GMOクリック証券、DMM.com証券、フィディリティ証券、PayPay証券(現One Tap BUY)
WealthNaviは先述したとおり、SBIホールディングス株式会社が株主となっているため、ネット証券最大手のSBI証券に導入されています。また岡三証券と業務提携を発表していますが、「対面のサポートを伴った投資一任サービスの提供」とリリースに記載されており、ネット証券の岡三オンライン証券では最初に導入されない可能性もあります。※13
東海東京証券はTHEOを運営する株式会社お金のデザインの筆頭株主です。マネックス証券はあかつき証券の株主になっています。
野村證券はロボアドバイザー(投資一任型)を運営するエイト株式会社を買収しましたが、その後のリリースは特にありません。※14
松井証券はロボアドバイザー(投資一任型)を導入していませんが、ロボアドバイザー(アドバイス型)を提供しており、そのシステムはシンプレクス・ホールディングス株式会社が開発・運営しています。THEOを運営する株式会社お金のデザインの株主にシンプレクス・ホールディングス株式会社がいることから、THEOが導入される可能性があります。※15
フィディリティは独自でロボアドバイザー(投資一任型)を検討しており、2020年内にはサービス開始としています。※16
DMM.com証券ほか、外資系証券や中小証券も数多くあるため、証券でもロボアドバイザー(投資一任型)導入はまだまだ進みそうです。
ロボアドバイザー(投資一任型)×その他
・WealthNavi:ANA、JAL、東急、小田急電鉄、東京海上日動
・THEO:docomo、JAL、朝日信用金庫
ANAやJALユーザーなど、金融機関以外にもロボアドバイザー(投資一任型)の導入が進んでいます。特にポイントサービスを展開している企業にとっては、顧客囲い込みの施策としてもロボアドバイザーは有効と見えているのかもしれません。
例えば2020年4月には、高島屋とSBI証券が業務提携を発表し、高島屋ユーザーに対して金融サービスの提供を開始しています。既存サービスに金融サービスを加えていく企業も多くなっていく可能性があります。※17
ロボアドバイザー(投資一任型)の成長性
ロボアドバイザーがどれくらい成長しているかを見るために、今回はウェルスナビ株式会社がプレスリリースで公表しているWealthNaviの口座数推移を時系列でまとめました。またWealthNavi for SBI証券の口座数推移も合わせています。
WealthNaviは2016年7月に正式リリースされて以来、右肩上がりで成長を遂げており、2020年8月13日時点で32万口座を突破しています。※18
その一方で、WealthNavi for SBI証券は鈍化しているように見えます。SBI証券自体の口座開設数は証券業界最大手の野村證券を抜いていますが、ロボアドバイザー(投資一任型)利用率はそれほど高くないということでしょうか。
預かり資産の金額を見るとWealthNaviは右肩上がりとなっていますが、2020年1月以降はコロナの影響もあり、一時成長が鈍化したようです。しかし、米国市場の株価好調を受けてか、2020年7月から8月の間には300億円増加しています。SBI証券は2020年8月に600億円を突破しており、WealthNaviの預かり資産の約20%弱がSBI証券の投資家の資産であることがわかります。※19
一般社団法人 日本投資顧問協会の統計資料で公表されているデータをまとめました。(2020年3月時点)
WealthNavi(ロボアドバイザー 投資一任型)と野村證券(ファンドラップ口座)の投資運用件数と金額を比較すると、件数はWealthNaviのほうが上ですが、金額は野村證券が10倍以上となっています。
一見すると大手証券の富裕層投資家などがロボアドバイザー(投資一任型)を活用し始めれば、さらに市場としては成長していきそうですが、富裕層投資家がサービスに求めていることは異なると考えられるため、急激な拡大となるかは個人的には不明な部分が多々あるなと思っています。
終わりに
2016年頃のロボアドバイザー元年から4年経ちますが、WealthNaviを見る限り、各サービスも右肩上がり成長をしているのではないかと思います。このまま綺麗な右肩上がりの推移をするのか、それとも急激な拡大をするロボアドバイザーが登場するのかは注目です。次回以降のロボアドバイザー関連記事は米国の各サービスの沿革をまとめていく予定です!
参考資料
- ※1:LINEとFOLIO、資本業務提携を締結
- ※2:三菱UFJ銀行とウェルスナビの業務提携について
- ※3:「お金のデザイン」への出資について
- ※4:新生銀行から総額5億円を調達
- ※5:お金のデザインとの資本業務提携について
- ※6:「ダイワファンドラップ・オンライン」の取扱いを開始します!
- ※7:マネラップがおまかせ運用サービス「ON COMPASS」にリニューアル
- ※8:No.1ロボアドバイザー「WealthNavi」を提供するウェルスナビが約41億円の資金を調達
- ※9:第三者割当増資および融資により総額59億円の資金調達を実施
- ※10:グローバル資産運用サービス「お金のデザイン」GMOクリック証券株式会社と業務提携
- ※11:経営統合に関する基本合意書の締結について
- ※12:日本郵政グループと大和証券グループの資産形成分野における 新たな協業の検討
- ※13:ウェルスナビと岡三証券が業務提携
- ※14:エイト証券株式会社および8 Limitedの株式取得について
- ※15:松井証券にロボアドバイザーシステムを導入
- ※16:フィデリティ、日本でロボアドを検討──2020年、資産運用のデジタル化でミレニアル世代も視野に
- ※17:【SBI証券】髙島屋および髙島屋ファイナンシャル・パートナーズとの金融サービス提供開始のお知らせ
- ※18:預かり資産・運用者数No.1 ロボアドバイザー(※)「WealthNavi(ウェルスナビ)」が預かり資産2800億円を突破
- ※19:「WealthNavi for SBI証券」サービス開始約3年6カ月で預かり資産600億円を突破
免責事項
・当記事は情報提供のために作成されたものであり、投資勧誘を目的とするものではございません。
・当記事は執筆者個人が作成したものであり、所属企業の見解などを表すものではございません。