以前公開した投資型クラウドファンディング業界マップ(リターン別)が好評だったことを受けて、法律別の業界マップ(カオスマップ)も作成しました!
これまでの数多のメディアで取り上げられてきた投資型クラウドファンディングの分類も、前回作成したリターン別に類似したような形だったのではと思います。
リターンがそれぞれの分類で異なる理由としては、各サービスを運営する企業が行政(金融庁や国交省など)から登録を受けている免許が関係しています。
投資型クラウドファンディングのサービスを運営する企業は、前提として、金融商品取引業者や不動産特定共同事業者としての登録を受けています。そして貸金業などの登録も受けることで、そのサービスの特徴やビジネスモデルを作っています。
今回の法律別の投資型クラウドファンディング業界マップ(カオスマップ)は、もっと深く投資型クラウドファンディングを理解したいという方や業界への参入検討をしている方向けです。以下より各分類へのコメントをいたしましたので、ご参考にどうぞ。
※私自身が士業でないため、内容に誤りがある可能性もございます。間違い箇所などがあれば、ご指摘いただけると幸いです。随時修正反映をさせていただきます。
当記事を読む前に簡単に理解しておきたいこと
法律別で投資型クラウドファンディングを理解したい場合、4つのキーワードを把握しておくと、理解が早まると思います。
・事業者:第一種や第二種金融商品取引業などの登録を受けており、投資家のお金を集める役割の企業です。取扱者などの表現をしているサービスもあります。
・営業者:実際に集めたお金を運用する(事業を行う)企業です。例えば不動産を購入して運用する事業や、貸金業の登録を受けて、借り手に融資をする事業などを行います。※投資家は投資する際に匿名組合契約を事業者ではなく、営業者と締結しています。そのため事業者リスクが切り離されているかどうかを各サービスで確認しておきましょう。
・事業型ファンド:集団投資スキーム持分のうち、有価証券・デリバティブ取引に対する投資が運用財産の50%以下のファンド。※「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」に関するQ&Aより
・貸付型ファンド:事業者が投資者からの出資金を原資として、主として(50%以上)金銭の貸付け(金銭消費貸借)を行うことを出資対象事業とするファンド。※貸付型ファンドに関するQ&Aより
投資型クラウドファンディング業界マップ(法律別)へのコメント
貸金業法+金融商品取引法
該当サービスは以下のとおりです。
- maneo
- SBIソーシャルレンディング
- クラウドバンク
- ジェイレンディング
- LENDEX
- Pocket Funding
- ネクストシフトファンド
- CAMPFIRE Owners
- COOL
- WillCrowd
- Bankers
※オーナーズブック、SAMURAI FUND、Fundsは下部で別途解説
このモデルが一般的にソーシャルレンディングや融資型・貸付型クラウドファンディングと呼ばれています。
第一種や第二種金融商品取引業と貸金業を同一の会社で登録を受けている、もしくは第一種や第二種金融商品取引業の登録を受けている会社と貸金業の登録を受けている会社が子会社である。つまり、実質同一の会社であるケースです。
例えばクラウドバンクの場合、第一種・第二種金融商品取引業は日本クラウド証券株式会社が登録を受けており、グループ会社のクラウドバンク・フィナンシャルサービス株式会社が貸金業の登録を受けています。
SBIソーシャルレンディングの場合は、SBIソーシャルレンディング株式会社が第二種金融商品取引業と貸金業の2つの登録を受けています。
自分たちでお金を集めて、そのお金を自分たちで融資するという一気通貫で提供するサービスといえます。これらのサービスで募集されているファンドを貸付型ファンドと呼びます。
金融商品取引法(電子申込型電子募集取扱業務)
該当サービスは以下のとおりです。
- セキュリテ
- Sony Bank GATE
- KAIKA
- 宙とぶペンギン
※ビットリアルティは下部で別途解説
第一種や第二種金融商品取引業の登録を受けている企業の中でも、電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けている企業が提供しているサービスです。これらが以前のリターン別の業界マップでは、ファンド型に該当します。※クラウドリアルティは除く
例えば日本酒の製造・販売や飲食店運営など、投資家から集めたお金の出資対象事業が貸付事業ではないファンドを募集することが可能です。このようなファンドを事業型ファンドと呼びます。
電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けている場合は、該当ファンドでクーリングオフ制度があるなど、他同業界のサービスと異なる点もあるので、よく確認してみましょう。
金融商品取引法(第一種少額電子募集取扱業)
該当サービスは以下のとおりです。
- FUNDINNO
- Unicorn(ZUUグループ入り)
- CAMPFIRE Angels
- GEMSEE Equity(SBIグループ)
- イークラウド
2015年7月の改正金融商品取引法で、新しく第一種少額電子募集取扱業が規定されました。
第一種金融商品取引業の登録を受けている場合、株式や債券などの有価証券の売買・勧誘などができます。その中でも非上場株式の募集又は私募の取扱を行うことができる(株式型クラウドファンディングサービスを運営できる)のが第一種少額電子募集取扱業の登録を受けている企業です。
発行する企業の年間資金調達金額上限が1億円であることや投資勧誘もWebサイトや電子メールのみといった制限されているなどの規制もあります。
金融商品取引法:その他(組み合わせなど)
その他に分けた理由は、以下の各サービスは複数の登録を受けているなど事情が異なるため、個別にコメントします。
オーナーズブック
オーナーズブックを運営するロードスターキャピタル株式会社は、第二種金融商品取引業、貸金業、投資運用業、投資助言・代理業、電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けています。
ロードスターキャピタル株式会社が第二種金融商品取引業の登録を受けており、子会社のロードスターファンディング株式会社が貸金業の登録を受けているので、この部分だけを見ると、一般的な融資型クラウドファンディングやソーシャルレンディングに該当します。
さらに投資運用業と電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けることで、不動産信託受益権の購入におけるエクイティ部分への投資が可能になりました。
SAMURAI FUND
SAMURAI FUNDを運営するSAMURAI証券株式会社は、第一種・第二種金融商品取引業、貸金業、電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けています。
SAMURAI証券株式会社で第一種・第二種金融商品取引業の登録を受けており、グループ会社であるSAMURAI ASSET FINANCE株式会社が貸金業の登録を受けるので、この部分だけを見ると、一般的な融資型クラウドファンディングやソーシャルレンディングに該当します。
また電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けているため、リターン別業界マップのファンド型の商品(事業型ファンド)を提供することが可能です。※近年これに該当する商品は提供されていません。
Funds
Fundsを運営するファンズ株式会社は第二種金融商品取引業、貸金業、電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けています。
貸付先の融資をリコースローンにすることで、これまでプロジェクトファイナンスの資金調達が多かった投資型クラウドファンディングの中でも実質コーポレートファイナンスの資金調達を可能にしています。※電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けていますが、事業型ファンドを募集した実績はありません。
クラウドクレジット
クラウドクレジットを運営する株式会社クラウドクレジットは、第二種金融商品取引業の登録を受けていますが、貸金業の登録を受けていません。
このサービスは株式会社クラウドクレジットがクラウドクレジット・ファンディング合同会社という子会社に融資を行います。さらに、海外のエストニアにある子会社に融資をすることで、その子会社が海外の様々な中小企業などに融資をするモデルとなっています。(グループ間での貸付は貸金業の登録が不要)
クラウドリアルティ
クラウドリアルティを運営する株式会社クラウドリアルティはクラウドクレジットと同様に、第二種金融商品取引業の登録を受けていますが、貸金業の登録を受けていません。
このサービスは株式会社クラウドリアルティが第二種金融商品取引業と宅建取引業の登録を受けており、国内の子会社に融資が行われます。その子会社が不動産関連の様々な事業を行うモデルとなっています。(グループ間での貸付は貸金業の登録が不要)
ビットリアルティ
ビットリアルティを運営する株式会社ビットリアルティは、第二種金融商品取引業、電子申込型電子募集取扱業務の登録を受けています。
ビットリアルティは貸金業の登録を受けずに、電子申込型電子募集取扱業務を組み合わせることで、投資する先の不動産情報を公開できるモデルを作りました。
このモデルでは、不動産信託受益権の購入におけるローン部分への投資が可能となっています。そのため、リターンでは融資型クラウドファンディングやソーシャルレンディングと変わらない予定利回りで分配金を受け取ることが可能です。
FUEL
FUELを運営するFUEL株式会社はクラウドクレジットやクラウドリアルティと同様に、第二種金融商品取引業の登録を受けていますが、貸金業の登録を受けていません。
このサービスは、FUELが募集取扱のみを行い、営業者が貸付を行います。2020年12月14日時点では、1件しかファンドが出ておらず、今後のどのようなスキームのファンドが多く登場してくるのかは未知数です。
不動産特定共同事業法
該当サービスは以下のとおりです。
- i-Bond(1号、2号、3号、4号)
- Rimpe(1号、2号、3号)
- TREC FUNDING(1号、3号、4号)
- タスキFunds(1号、2号、3号)
- FANTAS Funding(1号)
- LANDNET Funding(1号)
- CREAL(1号、2号)
- ハロー!RENOVATION(1号、2号)
- Jointα(1号、2号)
- アセクリ(1、2号)
- X-Crowd(1、2号)
- WARASHIBE(1、2号)
- PARTNERS Funding(1、2号)
- A-funding(1、2号)
- TSON FUNDING(1、2号)
- 信長ファンディング(1、2号)
- 大家.com(1、2号)
- ぽちぽち FUNDING(1、2号)
- みんなdeマンション経営(1、2号)
- SK PAYBANK(1、2号)
- エードMYバンク(1、2号)
- わかちあいファンド(1、2号)
- ONIGIRI Funding(1、2号)
- みんなで資産運用(1、2号)
- Good Com Fund(1、2号、任意組合)
- などほか多数(画像参照)
不動産特定共同事業法は1953年から制定されている法律で、大手不動産企業であれば、登録を受けているものです。
その中でも、電子取引業務に登録している企業が不特法型の投資型クラウドファンディングに参入しています。
1、2、3、4号の違いについては、井上先生が解説されている記事がわかりやすいのでぜひそちらをご覧ください。※
簡単にいうと、1号は自社の不動産案件のみ、1・2号は自社と他社の不動産案件を募集できます。また、1〜4号を全ての登録を受けているi-Bondは、運用期間が無期限で、いつでも買取請求ができるなどの他にはない特徴を持っています。
小規模不動産特定共同事業法
該当サービスは以下のとおりです。
- Renosyクラウドファンディング
- SYLA FUNDING
- DAIMLAR FUND
- などほか多数(画像参照)
不動産特定共同事業法の中でも2017年12月から新しく小規模不動産特定事業法が施行されました。
地方の不動産事業者も参入することで、空き家や古民家の活用を全国で促進し、地方創生を進めたいといった想いが国交省にはあるようです。
小規模不動産特定事業法では、資本金の引き下げや出資総額などに上限を設けるなどの条件が決められました。
出資総額は年間1億円の条件があるため、1,000万円×10物件しか出せず、投資できる案件数を増やしづらいのが難点といえるでしょう。
まとめ
各社は様々な工夫と凝らして、サービス運営していることがわかる記事になったのではないかと思います。また、2019年は新サービスや買収など業界がまた大きく動いた1年でした。2020年以降も投資型クラウドファンディング業界の動向に目が離せません!
インターネット上では購入型クラウドファンディングのカオスマップは存在していましたが、投資型で法律別に分類されたマップは調べた限りなかったので、日本初※をタイトルにつけています。(2020年2月12日時点)
この投資型クラウドファンディング業界マップが、さらに業界を盛り上げてくれるツールになると幸いです!画像ダウンロードで説明資料などにぜひご活用ください!質問などがあればお気軽にDMまで!
※:貸付型ファンドに関するQ&A、日本貸金業協会、第二種金融商品取引業協会
※:事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則、第二種金融商品取引業協会
※:金融庁、金融商品取引業者一覧
※:国交省、不動産特定共同事業法に基づく事業者及び適格特例投資家一覧
※:2017年不動産特定共同事業法改正~プロ向け事業の規制緩和、小規模不動産特定共同事業の創設~、井上 博登、ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.39、2017年