※この記事は Funds Advent Calendar 2021 20日目の記事です!
クラウドファンディング業界の主なトピックまとめ記事も5年目に突入しました。今年はM&A・MBO、サービス休止・閉鎖など業界の再編が進んだ1年だったのではないでしょうか。当記事が2021年を振り返るキッカケになれば幸いです!
2020年版も昨年ブログにまとめましたが、2020年版もご興味ある方はどうぞ!
資金調達を発表した事業者
Bankers(バンカーズ)
2020年12月にリリースしたBankersは2021年4月に10億円の資金調達を発表しました。※1
インキュベイトファンドを始め、CA Startups Internet Fund(サイバーエージェント)、グリーベンチャーズ、いちご、ミンカブ・ジ・インフォノイドなどVCや事業会社から出資を受けています。融資型クラウドファンディング業界 2020年の新規参入事業者としては順調なスタートとなっており、2022年の新機能や案件が気になるところですね。
クラウドクレジット
クラウドクレジットは2021年4月に三井住友海上キャピタル、GMO VenturePartnersから約3億円の資金調達を実施しました。シリーズEの総額資金調達額はこれで約11億円となります。※2
2021年11月には累計出資総額400億円を突破したものの、11月には延長が続いていたカメルーン案件で元本割れが確定しました。また、依然としてコロナも続いている中での案件組成やサービス展開は海外事情に左右されることも多く、今後の運用状況も注視といえるでしょう。
Funds
Fundsは2021年4月にシリーズC 約20億円の資金調達を発表しました。※3
新規引受先としてはANRI、日本郵政キャピタル、メルペイが名を連ねています。2021年はESGファンドや地銀を借り手企業とするファンドなど国内業界初の案件やリリースを続けています。
FUNDINNO
FUNDINNOを運営する株式会社日本クラウドキャピタルは、2021年6月に野村ホールディングスからの出資、資本業務提携を発表しました。2020年11月からの資金調達ラウンドを終えて、約21.7億円の資金調達を実施。同ラウンドでは、今回の野村ホールディングスをはじめ、東急、ちばぎんキャピタルなど大手企業からの資金調達も実施し、株主数は124人となりました。※4
株式型クラウドファンディングのように多数の株主を迎え入れ、クラウドファンディングの世界観を自社でも体現しています。また、野村ホールディングスはクラウドファンディング業界では初の出資となります。※筆者調べ
BOOSTRYなどSTO周りも注力しているようですが、株式型クラウドファンディングへの注目度も高く、例えば野村證券との連携などの取り組みに発展するか気になるところです。
イークラウド
イークラウドは2021年10月にジェネシア・ベンチャーズ、セレスから総額3億円の資金調達を発表しました。※5
株式型クラウドファンディング業界ではこれまでFUNDINNOが業界トップを走っていますが、米国・英国を見ると日本でも大きなマーケットを作っていける可能性があります。参入事業者はまだまだ少ない業界のため、魅力的な案件数増加やマーケットの拡大に期待です。
利回りくん
2021年12月に利回りくんを運営するシーラ(親会社:シーラホールディングス)は、楽天キャピタルを始め、オリックス銀行、セゾングループ、ジャックスなどのからの資金調達を発表しました。※6
今回の発表に合わせて、楽天ID・ポイントと連携を開始。クラウドファンディング業界では楽天ID・ポイント連携は初となります。※筆者調べ
インタビュー記事では会員数100万人を目指すと語られており、不特法型クラウドファンディング会員数トップのRimpleを早々に追い越せるか注目です。
M&A・MBOなどになった事業者
クラウドリアルティ
2021年7月にWealthParkがクラウドリアルティの買収を発表しました。※7
WealthParkは不動産オーナー・管理会社向けのSaaSサービスとして成長中ですが、クラウドファンディング機能の連携や不動産小口化といった部分でのサービス拡大が予定されているようです。クラウドリアルティ自体は2021年4月から新規案件がリリースされておらず、このまま休止状態になる可能性が高いかもしれません。
GEMSEE Equity(新 Angel Navi)
2021年9月にSBIエクイティクラウドが(SBIグループ)が運営する株式型クラウドファンディング「GEMSEE Equity」がインベストメント・テクノロジー株式会社に買収されました。※8
インベストメント・テクノロジー株式会社は京都を拠点に、VCファンドなどを運営している企業で、過去株式型クラウドファンディングのユニコーンで役員であった一村明博氏などもサービス運営に参画しています。
もともとGEMSEE Equityは1つの案件しかリリースしておらず、Angel Naviにリニューアルして以降案件を継続して出していけるかどうか注目です。
SAMURAI FUND
2019年に実質JトラストグループとなったSAMURAI FUNDでしたが、2021年7月にSAMURAI証券代表の山口 慶一氏によるSAMURAI FINANCIAL HOLDINGS(SAMURAI FUNDを運営するSAMURAI証券とSAMURAI ASSET FINANCEの親会社)でのMBOが発表されました。譲渡価額は約12.8億円。※9
SAMURAI FUNDはもともとスマートエクイティ(運営はAIP証券)という投資型クラウドファンディングで始まったサービスですが、売却・リニューアル・買収を繰り返しつつも、今でも案件を継続して出している業界でも数少ない歴史あるサービスとなっています。
COZUCHI
2021年8月に不特法型クラウドファンディングのWARASHIBEがCOZUCHIにリニューアルされました。2021年は同タイミングで運営元であった株式会社SATASがLAETOLI株式会社への社名変更、GFA株式会社との資本業務提携解消を行っています。※10
リターンの上限を設けない配当(キャピタルゲイン)のある案件は特に注目が集まっており、2022年以降の案件や他社案件がこのような仕組みで追随するような形になるか注目です。
サービス休止・閉鎖となった事業者
SBIソーシャルレンディング
2021年5月にSBIソーシャルレンディング事業からの撤退が発表されました。※11
同年2月から第三者委員会が設置され調査が進められていましたが、改善再開という形ではなく、撤退となったようです。融資型クラウドファンディング業界大手のサービスが休止・閉鎖となったことは2021年業界最大のニュースとなりました。
willcrowd
2019年11月からサイトが公開され、投資家登録も開始していたロックハラード証券が運営するwillcrowdが2021年6月に1案件も出すことなくサービス閉鎖となりました。※12
Angelbank
2019年にエメラダ・エクイティを事業譲受し、2020年にはWEIN Financial Groupに買収されたAngelbankでしたが、2021年11月にサービスを閉鎖、CAMPFIRE Angelsに引き継がれることになりました。※13
これでCAMPFIRE Angelsにはエメラダ・エクイティ、go angel、Angelbankがまとめられた形となり、株式型クラウドファンディングはFUNDINNO、Unicorn、イークラウド、CAMPFIRE Angels、Angel Naviの5社のみとなります。
ぽちぽち FUNDING
2020年8月にサービスを開始したアイディ株式会社が運営する不特法型クラウドファンディング「ぽちぽち FUNDING」ですが、2021年11月に事業終了が発表されました。※14
アイディ株式会社は2021年10月にディア・ライフ株式会社の完全子会社となったことから、その影響が大きいと推測されます。
新サービス・機能を発表した事業者
FUNDINNO:未上場株のセカンダリーマーケット
インターネット上で未上場株を売買できる「FUNDINNO MARKET」がリリースされました。株式型クラウドファンディングでは国内初の機能で、IPO・M&A以外の新しい選択肢となることに期待が集まっています。※15
利回りくん:ログインで楽天ポイント
利回りくんで楽天IDを連携することが可能になりました。ポイントはこれまでにCREALのTポイント、Rimpleのリアルエステートコイン(ポイント交換可能)、利回り不動産のワイズコイン(ポイント交換不可)など不特法型クラウドファンディング型のいくつかリリースされてきました。
いずれも投資したらポイント還元という形でしたが、ログインでポイントといったような一歩踏み込んだ連携は利回りくんが初となります。※筆者調べ
SBI証券や楽天証券ではポイントで投資信託を購入できるほか、PayPayボーナス運用やStock Pointなどポイントを活用した投資も拡大し始めています。投資型クラウドファンディング業界全体にもポイント投資・還元は普及していきそうですね。
アイフル:融資型クラウドファンディングに本格的に参入
2021年9月にアイフルグループが運営するAG Fundingがリリースされました。※16
アイフルはFundsに参加企業としてファンドを掲載し、融資型クラウドファンディングに間接的に参入していましたが、今年からは自社でもサービス運営を開始。アイフルの調達金利は年々低下傾向ですが、アイフル社債の売れ行きは好調です。
グループ会社が提供しているAGミライ払いはKyashやスマートバンクに導入されるなどFinTechとの提携や投資も積極的に行われており、資金調達の多様化のさらなる展開として2022年以降のAG Fundingの案件は注目といえるでしょう。
大和証券:融資型クラウドファンディングに新規参入
2021年11月にFintertech(大和証券グループとクレディセゾンのJV)が運営する融資型クラウドファンディング「Funvest」がリリースされました。※17
大和証券グループはこれで株式型クラウドファンディングのイークラウドも合わせて、融資・株式型クラウドファンディングの両方に参入したことになります。
まとめ
融資型クラウドファンディング
2021年の融資型クラウドファンディングはSBIが撤退となったものの、大和証券グループ、そしてアイフルのAGクラウドファンディングも参入しており、大手企業の信頼を全面に出す形で2022年以降も大手企業が参入してくる形が想定されます。不祥事も多かった融資型クラウドファンディングですが、ここからまた一段とサービスの顔ぶれや提携関係は注目となりそうです。
株式型クラウドファンディング
依然としてFUNDINNOが業界トップを走っていますが、Unicornは東証マザーズ上場の株式会社ZUU、イークラウドは大和証券グループといった大手や上場企業が運営元となり、業界全体としても案件数は増えています。
株式型クラウドファンディングで資金調達をし、コロナ化を乗り切って成長してきた未上場企業が東証マザーズへのIPOや大型M&Aとなれば、一躍注目されるのは間違いありません。そうした案件が2022年出るかどうか注目です。
不特法型クラウドファンディング
大東建託(東証一部:1878)のグループ会社や飯田グループホールディングス(東証一部:3291)のグループ会社など上場大手不動産企業も続々と参入してきた2021年でした。また、東京・関東以外にも関西、九州など全国的に不特法型クラウドファンディングに参入する不動産企業が増加し、全国の不動産案件に全国の投資家がインターネット完結で不動産投資できる環境ができつつあります。
不特法型クラウドファンディングのシステムを提供する企業も増え、サービス開始をしやすくなっていることから、参入企業は2022年以降もさらに増加するでしょう。
※1:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000065796.html
※2:https://crowdcredit.jp/info/detail/info-1523/
※3:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000102.000023781.html
※4:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000021941.html
※5:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000054017.html
※6:https://zuuonline.com/archives/234458
※7:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000040576.html
※8:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000086548.html
※9:https://www.nbank.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/2021062402.pdf
※10:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000036894.html
※11:https://www.sbigroup.co.jp/news/2021/0524_12472.html
※12:http://www.lockehallard.com/news/2021/06/willcrowd.html
※13:https://note.com/torii/n/nc08356746297
※14:https://pochipochi.jp/news/218
※15:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000046102.html
※16:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000010009.html
※17:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000056375.html